モーツァルト「コシ・ファン・トゥッテ」から(Pentaèdre:木管五重奏) [室内楽]

レーベルから判断するとフランス系カナダ人の木管五重奏団による「コシ・ファン・トゥッテ」のハイライト。フランス系の管楽合奏を楽しむCDで、その意味では大変魅力的に仕上がっている。2つのスピーカーの間に、左から、オーボエ、フルート、クラリネット、ホルン、バスーンと定位する。オーボエは、独墺系のチャルメラのような音色とは違い非常に柔らかくて上品だ。紅一点のフルートは、より表情にメリハリがあって音楽をひっぱる。メロディーは主としてこの2つの楽器が受け持つが、クラリネットが最もオペラ的な雰囲気を持っている。ホルン、バスーンも良く、全体に上品な音楽作りはドイツ系ともイタリア系とも違い、リラックスした上質な時間を過ごすことが出来る。[ATMA classique]
モーツァルト「バイオリン協奏曲第3番」他(バイバ・スクリデ:バイオリン、ハルトムート・ヘンヒェン指揮C.Ph.E.バッハ室内管弦楽団) [オーケストラ]

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スクリデはラトビア出身で、録音時20才であった。昨年だかベルリン・フィルとベルクの協奏曲を演奏したときは、このジャケットにようにモデルみたいではなくもっと知的な印象だったが、いずれにせよ華がある人だ。ただ、ここでの演奏は滑らかな音色は悪くはないが平凡で、モーツァルトの愉悦を感じさせるところまではいかない。それより見事なのは、バックのC.Ph.E.バッハ室内管弦楽団で、生き生きとした音楽を艶やかな音色で奏でていて聴きものだ。ドイツのオケ、特に旧東ドイツ系のオケは、音色に大変魅力があって、時にソロ奏者がかすんでしまうこともある。スクリデは、文化圏が異なり音楽のスタイルが違っていてるので、対比という点では十分だが、耳はどうしてもオケの方に向かう。[SONY]
GLORYLAND(歌:アノニマス4) [声楽]

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アメリカの開拓史にまつわるゴスペル、フォークソング、賛美歌などの歌を集めたアルバム。 歌っているアノニマス4は、女性4人のアカペラのグループで、欧米では大変な人気があるようだ。4人といっても、普通の合唱や重唱と違い、いずれも清澄な声が美しいソプラノで、独自の明るくかつ敬虔な囲気がある。ここでは2人の男性器楽奏者を加えていて、全19曲をソロから全員まで、様々な組み合わせで歌っている。どの曲も、神を称えながら仕事に励むような宗教的な内容を持っており、アメリカ人の心のルーツに触れる思いだ。私は、このうちタイトル曲「Gloryland」を始めとする4曲のゴスペルが特に好きだ。英語ではあるが、歌詞を収めたブックレットが付いている。[harmonia mundi]
「Opera Fantasy」(上野由恵:フルート、石橋尚子:ピアノ) [器楽]

上野由恵は、2007年日本音楽コンクール第1位で、現在まで国内の主要なオーケストラと共演 している若手のフルート奏者。「Opera Fantasy」とタイトルにあり、オペラの旋律をフルートに編曲した技巧曲などが5曲演奏されている。ただ、ピアノ伴奏にはオペラのドラマを意識した所が見られるものの、フルートはもっぱら華麗な技巧の披露が中心で、あまり知られていないオペラが多く、オペラチックな楽しみを期待するのは無理。その技巧は、さすがに指使いが流れるように自在で華やか、かつ安定して危なげのないものだ。貴重な才能で、こうして技巧曲ばかり並ぶと、コンクールで課題曲を聴かされているような気分にもなるが、オケと一緒とか演奏会なんかで聴くと華があっていいんだろうと思う。[CRYSTON]
モーツァルト「フルート四重奏曲(全4曲)」(エマニュエル・パユ:フルート、クリストフ・ポッペン:バイオリン他) [室内楽]

パユは、オーボエのアルブレヒト・マイヤーと並んで、現在のベルリン・フィルの木管の顔と言っていい。フランス語圏スイスの出身で、フランスとドイツの文化的接点に位置する人だ。名前からフランス系と思って華麗な演奏を想像すると決してそうではなく、緻密さも重厚さも兼ね備えた、非常にしっかりした演奏をする。ベルリン・フィルは女人禁制が解けて女性奏者が目立ってきたが、音色もフルトヴェングラー、カラヤンの時代の緊迫したゲルマン的な感じが薄れ、国際的でいくらかふっくらとしてきたと思うが、依然として非常に緻密で正確、しっかりしたところは、パユの役割も大きいだろう。このフルート四重奏曲でも、カチッとした構成感で聴かせる立派な演奏。ただ私としては、もう少し心が癒されるような、スキのある演奏にも惹かれるところがある。[EMI]
フルートとオーボエのための二重奏によるオペラ名旋律集(ヴォルフガング・シュルツ:フルート、ハンスイェルク・シュレンベルガー:オーボエ) [器楽]

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1987年録音の古いCDだが、折につけては本当によく聴く。 シュルツはウィーン・フィルの首席だが、名手が揃ったベルリン・フィルの奏者との共演を好んで行った。ここではオーボエのシュレンベルガーとモーツァルトの四大歌劇からの名旋律を演奏している。ベルリン・フィルのオーボエというと、ローター・コッホがカラヤン黄金期の奏者として有名で、シュレンベルガーはそれほど知られてはいないが、コッホ同様、よく通る音色を持っている。とはいえ、やはり音楽を引っ張っているのはシュルツだ。この人の音色は中域が豊かで、一つ一つの音が高域に至るまでゴージャスだ。音楽は端正で、かつ活き活きとして自然で心地よい推進力がある。左右スピーカーの中央・左寄りにフルート、右寄りにオーボエが定位し、時に聴き分けがつかないほどに音色が混ざり合って、呼吸がぴったり合った楽しい演奏が繰り広げられる。[DG]
歌劇「コシ・ファン・トゥッテ(フルート四重奏版)」(ヴォルフガング・シュルツ:フルート、ウィーン・フィルハーモニア弦楽三重奏団) [室内楽]

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ウィーン・フィルというのは、シュルツなのだ。私たちがウィーン・フィルという時にイメージするオケの音色は、シュルツのフルートの音色とぴったりと重なり合う。 共に、柔らかく、内に豪華さを秘め、音楽が弾むように前へ前へと進み、やがて聴くものは無上の幸福感に満たされる。技巧も、音楽性も、何もかもがトップ・クラスだ。ここではシュルツとウィーン・フィルのメンバーとの共演で、十八番のモーツァルトのオペラからのナンバーを演奏している。弦がやや控えめなのは、各パートのトップではないからか、あるいはシュルツを立ててからだろうか。その代わり、名旋律の数々をシュルツのフルートでたっぷりと聴くことが出来る。1970年から首席を勤めてきたシュルツも、今季で引退という。ウィーン・フィルの音色がどのように変わるのか、それはそれでまた楽しみでもある。[camerata]
「愛の夢」(千住真理子:バイオリン) [器楽]

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千住真理子は、旋律の歌わせ方に非常に豊かな才能と音楽性を感じさせるバイオリニストだ。海外での実績がないわけではないが、活動の中心を国内の教育的・啓蒙的な分野に置いている。このCDもそういった性格を持っており、どれもこれも名曲中の名曲ばかり。通好みの凝った選曲はない。「思い出」(ドルドラ)、「花の歌」(ランゲ)、「エストレリータ~小さき星に~」(ポンセ)など、歌い口がうまくて思わず聴き惚れる。ストラディバリウス「デュランティ」の深みのある音色の素晴らしさも、スピーカー越しに伝わってくる。最後に演奏される「ラストナイト~想い出~」(千住明)は実兄の作品で、旋律の美しい佳品。ただバイオリンの魅力ともいうべき重音とかスタッカートとかを、中間部あたりで聴きたかったと思う。日本人による小品集としては異例に(?)満足感が高く、バイオリン音楽の入門用として最適のCDと思う。 [EMI]
神様のカルテ ~辻井伸行 自作集 [ピアノ]

チャップリンの永遠の名作「街の灯」を観て思うのは、「どんなに貧しくても心のきれいな人たちがいる」ということだ。 このCDのを聴くと、「何年も光のない世界に生きて、どうしてこんなに優しい気持ちになれるのだろう」とふと思う。共通する答えは、「人の愛情」だろう。
しかし「街の灯」にしても、主演女優を途中で変えて最初から撮り直すほどの完璧主義があるからこそ有名な最後のシーンの感動があるように、ここでも優しさを支えているのは完璧な柔らかい指のテクニックで、右手左手のあらゆるフレーズに至るまで感情が息づいている。
その一方で、優しい歌、歌、歌と続くこのCDを聴いていると、不思議な感情で心が満たされる反面、もっとキレの良いリズムも聴きたくなる。ショパンの曲にしても、半分は特徴あるリズムの舞曲だ。
新しく加わった曲を含めても、依然として「川のささやき」がいい。[avex]
バッハ「無伴奏バイオリン・ソナタとパルティータ(全曲)」(アリーナ・イブラギモヴァ:バイオリン) [器楽]

私は半年ほど前に同誌付録のCDでそのさわり(ソナタ3番4楽章)を聴いて、そのあまりの技巧の冴えに驚いてすぐに購入した。以来、幾度となくこのCDを聴いている。
全体に抑制された表現で、ノンビブラート、禁欲的とも言えるモノトーンで静謐な世界が繰り広げられる。速い楽章での技巧は相当なものだ。ただパルティータ3番になっても依然として明るさが見えてこないこの演奏は、くすんだ音色と共に決して耳に快くない。
俗世間と距離を置いているかのようなこのバイオリニストは、やはり一筋縄ではいかない。じっくりと付き合っていこう。[hyperion]






